血糖を下げるホルモンはインスリンといって、膵臓のベータ細胞から分泌されます。血糖を下げるホルモンはこれしかありません。一方、血糖を上げるホルモンはたくさん種類がありますが、一番力価が高いものに、主に膵臓のアルファ細胞から分泌されるグルカゴンがあります。
糖尿病の病態生理の説明にはいつもインスリンと血糖が語られており、グルカゴンの作用はあまり研究されていませんでした。その理由の一つにグルカゴンを正確に測定する技術がなかったことがあります。最近になってある程度正確に測定する技術ができ、血中グルカゴン濃度から糖尿病を説明する勉強をしました。
二型糖尿病の人は、空腹時からグルカゴンの血中濃度が高く、糖尿病の検査として使われる糖負荷試験を行う、血糖が高いにも関わらずグルカゴン分泌が抑えられていませんでした。食後は血糖が上がるので、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンは低値をとるべきなのにそうではない。一方で、食事負荷試験での負荷後血中グルカゴン濃度は健常者では少し上がるのですが、糖尿病の人ではその上昇値が高いそうです。食事負荷では蛋白質や脂質の影響でグルカゴンはある程度分泌促進されるのですが、糖尿病患者ではその値が高いということです。また、糖尿病患者では、空腹時のグルカゴン濃度が健常人に比べてそもそも高いのです。糖尿病に至らない耐糖能障害の段階の人でもこの傾向はあります。グルカゴン値を測定することで、糖尿病予備軍を発見することもできそうです。
グルカゴンは血中のインクレチン濃度やインスリン濃度は相関のない独立した値なので、従来の血糖、インスリンと同じく、糖尿病の病態を説明する良い指標になるということです。グルカゴン値の測定がルーチンになれば、一層より良く糖尿病の治療ができるということになります。早くその時が来るのが待たれます。
blog血糖を上げるホルモン、グルカゴンの勉強
2021.05.20