SGLT2阻害薬と言って、腎臓に働き尿中に糖を排泄させてしまう薬があります。日本では6製品があり各製品に分量や形の違うものもあるので種類でいえば11種類あります。このうちダパグリフロジンプロピレングリコール水和物の10mg製剤が2014年に二型糖尿病治療薬として承認され、2019年には一型糖尿病にも承認されました。2020年には慢性心不全の効果が追加承認され、2021年には慢性腎臓病にも効果が承認されました。
この効果を証明した試験にDAPA-CKD試験があります。特殊な腎臓病を除いた慢性腎不全患者で、試験時には一番良い治療をしっかり受けていた患者4300人が対象となりました。これらの患者を二つに分けて、一組にはダパグリフロジンを、もう一組にはプラセボを与え経過観察をしたわけです。検査終了となるイベントは、腎機能が半分以下になってしまったり、心臓や腎臓が悪くなって死んだりしたとき、です。
試験にかかわった腎臓病患者は7割近くが糖尿病を持つ人でした。また、糖尿病と腎不全を持つ人のうち、糖尿病が原因で腎臓が悪くなった人は9割近くでした。ただし、糖尿病が原因ではなく腎臓病になった人も含まれています。
はじめは糖尿病の薬として登場し、かなりいぶかられながらもその効果が認められ今では外来通院できる糖尿病患者にはほとんど投与されえいるような薬になりましたtアイ力低下を都のなわずに。体重が減ることが期待されます。糖尿病によって起こった腎不全に聞くことがわかり、ついには糖尿病のない腎不全にも効くことがわかりました。さらに心不全にも効くことがわかってきました。
私見:外来で血液検査をしていて経時的に腎機能を図っていると、70代くらいからほとんどの人が腎機能が落ちてきます。糖尿病や腎臓病がない人たちのことですが、いわゆる腎硬化症となってゆくからでしょうね。初めの10年間くらいはクレアチニン値は正常値に入っているのですが、正常枠の中でもじわじわと上がっているのです。正常値を超えたときに腎機能低下症と診断がつき、さらに進んで慢性腎不全と診断がついたころには加速度的に腎機能が悪化します。いつから悪くなるのか、悪くなる速度がどうなのかで、透析せずに天寿全うするのか、超高齢になってから透析になるのかが分かれるのだと思います。
さて、それであれば、高齢者は70台に入ったころから、糖尿病の有無にかかわらずSGLT2阻害薬を飲み始めたほうが良いのかもしれません。もちろん心血管系にも良い景況が出そうです。ところが、医療は病気に対して行うものなので、健康な人に薬を使って10年後にどうなるかなどという実験はできません。でも、いつかこの薬を投与する病態の範囲が広がって、腎機能低下症や心不全に対する予防薬として位置づけられる時が来るのかもしれません。