高血圧症は様々な臓器障害をきたします。現代は長寿化が進んだことにより、高血圧症に伴う心不全と腎不全が問題になってきています。心不全は腎不全を悪くし、腎不全は心不全を悪くするからです。また、心臓や腎臓の機能は、白髪が増えるように必ず加齢によって悪化します。まずは血圧を下げることで、これらの余分な加齢変化をなるたけ抑えなければなりません。
今まで、さまざまな種類の降圧薬が上梓されてきました。カルシウム拮抗薬は切れは良いけれどもあまり生理的ではない。RAS系阻害薬は推奨はされているけれども効果を感じにくく、高齢者に使った場合は急性腎不全を起こす可能性がある。ループ系利尿薬は長期に使えば人血流量をおとし、必ず腎機能は低下してゆきます。つまり、進行した心腎連関状態に陥ってしまえば降圧薬の作用は限られてくるということです。高齢者の心不全、腎不全の増加は由々しき問題となります。
新しい降圧薬は、もともと心不全の治療薬として開発されてきた薬に従来の降圧薬を足したものです。生理学的には細かい理由がありますが、いきなり結論を述べれば降圧にはとても有効です。さらに腎臓への血流を上げますが、輸入細動脈を広げ輸出細動脈を拡張させます。糸球内のメサンギウム細胞によるGFR調整をよくすることも相まってGFRを上げます。
さて、もともと存在したレニンアンジオテンシン系のシステムをなぜ調整する必要があるのかという疑問が出てきます。水中にいた生物が地上に進出したため、体液を保ちナトリウムを保持する必要があり、さらに脳に血流を送るために血圧を保つ必要があった。さらに太古の時代には、海水中から入ってくるナトリウムを常に排泄する必要があった。これらの二つの理由でRA系システムが存在するということかもしれないということです。その機構が、長寿化によって衰えてくるために、機構そのものを整える薬が必要となったということです。