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  • 糖尿病性腎症(DKD)の病態と治療 復習

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2024.09.16

かつて糖尿病性腎症では正常アルブミン尿(Ⅰ期)から顕性蛋白尿(Ⅲ期)を経て尿細管間質病変になり腎機能が低下(Ⅳ期)し、年間10ml/分/年eGFRが低下し10年で透析(Ⅴ期)になる不可逆的な疾患でした。そのため早期にアルブミン尿をとらえる必要があり、正常アルブミン尿期から顕性たんぱく尿期の間に微量アルブミン尿期(Ⅱ期)が腎機能低下症を予期するサインとして使われるようになりました。

それではなぜ高血糖が腎機能障害を引き起こすのでしょうか。一つには高血糖により逆起された解糖系側副路が亢進し、炎症や細胞死が起こることが分かってきました。また、高血糖は輸入細動脈拡張と輸出細動脈収縮をきたして糸球体高血圧も引き起こします。この背景にはレニンアンギオテンシン系の亢進があります。

治療の基本は厳格な血糖管理(HbA1c<7.0%)、RAS系阻害薬を使った厳格な血圧管理、厳格な脂質管理(LDL<120)を行うことです。集学治療によって6割でⅢ期でもⅡ期に戻すことは可能です。DKDの2割は、もとに戻すことも可能です。

かつてアルブミン尿のある患者を治療しアルブミン尿を減らすことができれば腎機能の低下は防げたのですが、現在ではアルブミン尿がなくとも腎機能が低下する症例が認められるようになってきました。その違いは何なのでしょうか。蛋白尿が多く腎機能が急速に低下する症例には強い糸球体病変が認められる一方、蛋白尿なく腎機能が低下する症例では血管病変や尿細管間質病変があることが分かってきました。すなわち腎硬化症の要素が強くおこり、高齢化に伴って加齢性変化も加わってきた結果のようです。

DKDの予後を考えると、アルブミン尿があるかないかということと、腎機能低下速度の両方を考える必要があります。いまだに蛋白尿のあるDKDの予後はなかなか改善できません(透析導入や死亡が減っていません)。以前では、経過観察しかなかっただけの、蛋白尿のない腎機能低下症にも積極的な治療ができるようになってきました。

それでは腎機能を考えた場合の糖尿病治療はどのようにすればよいでしょうか。かつてはインスリンやSU薬がよく使われていました。現在では、低血糖への考慮と、良い薬が出てきたこともあり、インスリンやSU薬は昔ほど使われなくなってきています。1,GLP1受容体作動薬は体重減少、血圧低下、血糖低下により腎機能保護に良い効果があります。2,GLT2阻害薬は蛋白尿のない腎機能低下症の機能低下速度を減らします。さらにアルブミン尿を60%以上減らせた場合は腎機能低下速度が老化によるものと同じレベルまで減らせることが分かりました。もはや腎機能低下症の寛解と言ってもよいことが起こるのです。しかしながら、GLT2阻害薬は低下した腎機能を戻すものではありません。あくまでも低下速度を遅らせる薬という位置づけです。

糖尿病性腎症に対する血圧管理はどうでしょう。DKDではミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性化があるため、従来の薬では血圧管理では難しく、MR活性化というRAS非依存経路による腎機能低下症があります。MR拮抗薬でアルブミン尿を減らせた場合は、腎機能低下をかなり抑制できます。一方で蛋白尿の改善がない例では腎機能低下症は防ぐことはできません。

高齢化に伴いDKDにも様々な要素が加わり、純粋なDKDとは分類できない腎機能低下症が増えてきました。それでも先に挙げた集学的治療により腎機能低下症はかなり管理できる病態になりつつあります。

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