あめのもり内科

06-6872-0221

特徴

ブログ

  • HOME>
  • ブログ>
  • 神経変性疾患の治療における最近の話題

blog

2024.10.12

ATTRvアミロイドーシス

トランスサイレチン(TTR)という、肝臓で作られ甲状腺ホルモンやビタミンを運搬するタンパクがありますが、これは血中では四量体を形成しています。遺伝的な変異があるとモノマーに乖離しやすくなりアミロイド繊維を形成して神経に蓄積して障害をきたします。診断から死亡まで平均4.5年で肝移植しか治療法がありませんでした。なんと、ここ数年で予後を劇的に改善する薬が出てきました。一つはTTR四量体を安定化して、モノマーへの乖離を防いでアミロイド形成を抑制する薬です。もう一つはTTRのmRNAを分解しTTRタンパク質の産生を抑制する薬です。発症早期から使えば健常人とほぼ変わらないかもしれません。

脊髄性筋萎縮症

脊髄全角細胞の変性による筋委縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病です。体幹と四肢近位部優位の進行性筋萎縮をきたしSMN1遺伝子の欠失または変異による常染色体潜性遺伝です。Ⅰ型からⅣ型まであり重症度が違います。この病気ではSMNタンパクをコードする塩基配列にはSMN1とSMN2がありますが、本来TTTであるべきものがTTCに代わっています。TTTでもTTCでもフェニルアラニンを産生するということでは変異があっても構わないのですが、SMN1遺伝子の相同遺伝子であるSMN2でTTTがTTCに代わるとエクソン7のスキッピングが起こり、十分量のSMNタンパク質が作られません。

SMN1遺伝子の変化

  • SMN1遺伝子の欠失または機能喪失性変異が主な原因です。
  • 約95%の患者でSMN1遺伝子の両アレルが欠失しています。
  • 残りの約5%では、一方のアレルが欠失し、もう一方のアレルに機能喪失性変異が生じています。

SMN2遺伝子の役割

  • SMN2遺伝子はSMN1の相同遺伝子で、通常は複数コピー存在します。
  • SMN2遺伝子は、SMN1と比べて機能的なタンパク質の産生効率が低いです。
  • SMN2のコピー数が多いほど、症状が軽くなる傾向があります。

結果として起こること

  1. SMNタンパク質の減少:
    • SMN1遺伝子の欠失により、機能的なSMNタンパク質の産生が著しく減少します。
    • SMN2遺伝子からも一部SMNタンパク質が産生されますが、十分な量ではありません。

  2. 運動ニューロンの変性:
    • SMNタンパク質の不足により、脊髄の運動ニューロンが変性・消失します。

  3. 筋萎縮と筋力低下:
    • 運動ニューロンの消失により、筋肉への神経信号が減少し、筋萎縮と筋力低下が進行します。

  4. 症状の重症度:
    • SMN2遺伝子のコピー数によって症状の重症度が変わります。
    • コピー数が多いほど、より多くのSMNタンパク質が産生され、症状が軽くなる傾向があります。

  5. その他の影響:
    • SMNタンパク質はRNA代謝や軸索輸送にも関与するため、その不足は細胞全体の機能に影響を与える可能性があります。

これらの遺伝子変化により、脊髄性筋萎縮症患者では運動機能の進行性の低下が見られ、重症例では呼吸筋や嚥下筋にも影響が及ぶことがあります。

重賞度はSMN2遺伝子のコピー数に依存し、コピー数が多いほど軽症になるというわけです。遺伝子に作用する薬が現実に利用できるようになりましたが、その中には2歳未満に適応がある薬で薬価が1億7千万円するものもあります。具体的にはSMN2遺伝子のエキソン7を取り除き、その部のスプライシングを回避する薬です。遺伝子検査により、乳児の発症前に適応すれば非常に効果が高い薬です。

 

 

close

新型コロナウイルス対策

06-6872-0221