認知症にはアルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭葉型などがあり、現在日本では500万人が罹患しています。その中でもアルツハイマー型認知症は全体の7割弱を占めています。従って認知症治療はアルツハイマー型をターゲットにしています。
アルツハイマー型認知症は、発症する20年前から脳神経にアミロイドβ蛋白がたまっており、発症時にはたまり切っていることが分かっています。従ってアミロイド蛋白がたまる前から治療すれば将来の発症を予防できる可能性が高いのです。現在レカネマブという抗体薬があり、アミロイドβ蛋白が凝集する前にこの抗体をアミロイド蛋白に攻撃させて蛋白の凝集を防ぐというわけです。アルツハイマー病のごく早期に使えれば効果があるはずです。アミロイド蛋白は生体ではある酵素によって分解されて脳内細胞からリンパ管に排出されるのですが、この薬は血管にアミロイド蛋白を沈着させることで血管の脆弱性を高め出血を惹起する可能性があります。定期的に、同じMRI装置で経過を観察する必要があります。まだ始まったばかりの治療なので、長期予後についてはどうなるか観察が必要です。