あめのもり内科

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2025.04.09

さる場所で話をする機会があり、図を含めて以下の話をしました。

脳の構造と機能の異常

  1. 前頭葉の機能障害:
    • 前頭葉、特に腹側正中前頭前皮質(vmPFC)の損傷が、反社会的行動や犯罪行為につながる可能性がある
    • 前頭葉損傷群は、他の脳部位損傷群や健常群と比較して、攻撃的行動や暴力の頻度が高い。
  2. 特定の脳ネットワークの障害:
    • 犯罪者の脳病変を分析した研究では、vmPFCと背側正中前頭前皮質(dmPFC)を含む「犯罪関連ネットワーク」が特定された
    • このネットワークは道徳、価値観に基づく意思決定、他者の心の理解に関わる領域を含んでいる。

脳病変の出現後に犯罪を起こした17症例を対象とした.図D単一の病変では説明がつかない

次に病変ではなく,病変がつながる脳ネットワークの障害が原因であると仮説を立て健常者の脳コネクトームを調べ作成したデータベースを用いて,17例の障害部位を重ね合わせると,ほとんどが,Phineas Gageが損傷を受けたvmPFCと結合しており,さらにdmPFCdorsomedial PFC;背側正中前頭前皮質)とも結合していた.この「犯罪関連ネットワークパターン(図E赤)」はこれまで報告された神経精神疾患のネットワークパターンとは異なるもので,認知制御や共感・感情移入の領域は含まれていなかった.その一方で,道徳,価値感に基づく意思決定,theory of Mind(他人が自分と同じように考えているという認識部位)のネットワークを含んでいた(図E緑および黄).

    •  
    • 進化心理学的視点
  1. 適応メカニズム:

世界的に見て圧倒的に男性が男性を殺す事件が多い。

男が男を殺す場合

理由:第三者から見ればくだらない理由の面子を守るため。例えば、馬鹿にされた、ののしられた、ぶつかったのに謝らない、などといった口論に端を発する面子を守るための葛藤。この奥にある本当の理由は自己評価、自己顕示欲の現れである。考え方のぶつかり合いとか、社会的な名誉などではない

 

    • 殺人を引き起こす心理的メカニズムは、進化適応環境(EEA)における生存と繁殖に関連した適応の結果である可能性がある。

性淘汰は、①配偶者の獲得をめぐる同性間の競争と、②異性の選り好みという2つのプロセスが作用していると考えられる。①では、武器的な構造が雄に発達する。②ではクジャクの羽やカナリアの歌声など、闘争ではなく、雌に対する求愛の表示として使われる。人間も、配偶者の獲得をめぐる競争は、女性よりも男性の方が強いので、口論で勝ちたい、高い自己評価を得たい、まわりから強い奴だと思われたいという欲求は、男性の方が強い。20歳代は繁殖にさしかかる年齢なので、何に対しても男性の自己顕示欲がピークに達している時期。

 

男性が女性を殺す場合

性的嫉妬では、男性が女性を殺すことが非常に多く、自分が愛しているが自分を捨てた女を殺してしまう。

おそらく、配偶者防衛の現れ。(雄が雌の行動をコントロールすることにより、確実に自分の遺伝子を残そうとする、哺乳類の雄に一般的に見られる行動規制)これが高じると、雌の生活のすべてにわたって行動を規制しようとするが、コントロールできなくなると暴力や殺害という行動に至ることがある

日本の55年のサンプルでは、夫婦に限っても、妻が夫を殺したのが24件に対し、夫が妻を殺したのが85件あり、62件は奥さんの浮気や家出など、女性が連れ合いの男性を捨てたことに起因している。つまり、夫が妻をコントロールできなくなった時に殺人が起きている。

 

社会科学的な視点から殺人をアプローチすることは、医学的見地から外れるため今回は言及せず。

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