我々が学生のころから、病気へのアプローチとして、病気の原因をミクロレベルで詳細に調べ、その原因に基づいて治療法を選択するということが主流でした。既存の病理学的知識や理論(例えば、特定の病原体が特定の症状を引き起こす)に基づき、原因を特定し、それに対応する治療法を適用するトップダウン型で、理論から具体的な診断・治療へ進む演繹的アプローチ。また、観察された症状やデータからパターンを見出し、そこから病気の原因を推測するボトムアップ型で、観察から理論構築へ進む機能的アプローチ。この二つの組み合わせで考えていました。
-
昔は「演繹的」または「帰納的」な方法が主流であり、専門知識や理論への依存度が高かったため、診断精度が重視されました。今では治療を考えるに演繹的な方法はあまり用いられていません。現在は「アブダクション」や「アナロジー」が重要視され、患者中心・実用性重視の医療が進展しています。この変化は、高齢化社会や複雑な疾患構造への対応として合理的です。このように、医療は時代とともに柔軟性と実効性を重視する方向へ進化しています。
- 例として、実際に臨床の現場では、心機能や腎機能が悪いということに対して病名を与えることなく、心不全や腎不全などの病態名で治療を行うことが重要視されています。