心臓は上部にある心房から発せられる信号によって規則的に拍動しています。心房細動という不整脈は、正常な心臓の信号が乱れ心房が痙攣するように震え、その波が不規則に心臓に伝わることによっておこる不整脈です。痙攣する心房には血液がよどむために粥状の血栓ができ、時にその血栓が血流にのって全身に飛び、血栓が脳に詰まれば大きな脳梗塞になります。心房が拡大することで心臓の中の弁の付着部が拡大して僧帽弁閉鎖不全となり、これがさらに心房を拡大し最終的に心不全にもなります。突然死も増え、結果として寿命が縮みます。日本では高齢化に伴い人口の10%に心房細動が起こり、脳梗塞の30%が心房細動由来といわれています。
かつては心房細動を正常に戻す治療法がなく、血栓を作らないようにアスピリンやワーファリンが使われていました。それでも結果は芳しくなく、薬による出血で実際には生命予後に関して効果がなかったのです。今では抗凝固薬として新しい薬が普及し、心房細動由来の脳梗塞は格段に減りました。かつて特別養護老人ホームなどでは半身まひなどの脳梗塞後遺症を持っている人が多くいました。今では確かにそのような人はほとんど見ません。高血圧の薬は早くから登場していたので脳出血は減ったのですが、心房細動に対する抗凝固薬が登場するまでは脳梗塞の患者が多かったのです。
現代では心房細動そのものを治療する方法があり、そもそもの血栓ができないうえに心房細動から心不全になることも防げるようになってきました。大腿静脈からカテーテルを挿入し、心房中隔を穿刺して左心房や肺静脈周囲の異常な心筋収縮パルスを処理したり、その伝導路を遮断したりします。処理の方法も進化して、食道穿孔や横隔神経麻痺などの合併症も起こさないように、なおかつかつてより簡単に短時間に処理できるようになりました。
術後の再発率も低く、再発しても短時間で収まることがほとんどです。また、人によっては体が軽く動けるようになります。条件によっては抗凝固薬も必要なくなります。抗凝固薬自体も新しいものが治験されており、さらに合併症なく安全に薬が使えるようになるでしょう。
blog心房細動の治療
2025.09.25