2025年に日本循環器学会・日本心不全学会が 心不全診療ガイドラインを全面改訂しました。この改訂では、心不全の定義や分類、診断基準が更新され、高齢者心不全の特徴にも配慮した内容が盛り込まれています。
まず心不全の定義ですが、日米欧合同の「Universal definition and classification of heart failure(UD)」に準拠し、心臓の機能・構造異常に伴う症状や組織血流低下を含む症候群と定義されました。また、心不全のステージ分類が強化され、ステージA(心不全リスクあり)に慢性腎臓病(CKD)が新たに加えられ、早期の予防介入が重要視されるようになりました。要するになるたけ早い時期から心不全の治療を始めるべきだということです。臨床的に心不全が疑われる前に、ステージAの段階から治療を始めるべきということです。使う薬はほぼ決まっています。商品名でいうとエンレスト、ミネブロ、ジャディアンスかフォシーガ、メインテートです。腎不全にもこれらの薬を、違う組み合わせで使うことも多く、おそらくこれからもいろいろと適応できる病態が広がってくると思います。
心不全は、かつては心臓の収縮力が低下する病態、すなわち血液が全身に効率よく送れない状態を示していました。今ではこのポンプ機能としての左室駆出率(LVEF)に基づく分類に加えて新たに「HFimpEF(改善した駆出率の心不全)」が定義され、従来のHFrEF(駆出率低下型)、HFmrEF(中間型)、HFpEF(駆出率保たれ型)に分類が細分化されました。
- 薬物療法の推奨が拡充され、従来効果が明確でなかったHFmrEFやHFpEFに対しても、SGLT2阻害薬やフィネレノンが推奨されるなど治療選択肢が増強されました(上記)。なるたけ早い段階でファンタスティックフォーと呼ばれる上記の良い薬を使えということです。急性期心不全、慢性期心不全という区別などは考えずに早く治療を開始すべきということでもあります。非薬物療法としてリハビリテーションや体重管理、デジタルヘルスによる遠隔モニタリングなども推奨されます。
- まあ、考えたら当たり前ですが、ガイドラインとして定義をされたことが大事なことです。これによって、エビデンスに裏打ちされた正しい治療を自信をもって行えるようになりました。
