心腎関連といって、心臓が悪ければ心臓が悪くなる、逆も真なりということは最近よく言われています。
今までこれらは独立した病態と考えられており、治療としてはそれぞれの臓器に対するアプローチに限られてインした。今では、SGLT2阻害薬という糖尿病の治療薬が、糖尿病だけではなく心不全腎不全に対する有効な治療薬として注目されています。今回は、なぜSGLT2阻害薬が効果を発揮するのかということはもちろん、たとえ機序はわからなくても実際に心不全や腎不全にどれだけ利益をもたらすかについての勉強をしてきました。
ここでは間質の浮腫を軽減するという話をしてみます。
腎臓に動脈硬化が起こると腎臓への血流が減り、血液をろ過している腎臓には大きな負荷がかかります。いかに検索した内容につき記載します。
犬を用いて腎臓の動脈圧・静脈圧を人為的に変化させ、どちらがより腎障害を引き起こすかを検討した古い実験は複数ありますが、総じて「腎静脈圧の上昇(うっ血)の方が、同程度の変化なら動脈圧上昇よりも急速かつ強い腎機能障害・形態学的変化を起こす」という結論が支持されています。
実験の大まかなデザイン
20世紀中頃までの腎循環の研究では、以下のような犬実験モデルが用いられました。
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腎動脈側操作:腎動脈を部分的にクランプしたり、上流で収縮薬を用いることで、動脈圧を変化させる。
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腎静脈側操作:腎静脈を結紮・部分狭窄したり、下大静脈圧を上げることで、腎静脈圧あるいは腎うっ血を惹起する。
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評価:尿量・GFR(イヌリン/クリアランス)、腎血流量、組織学的変化(糸球体うっ血、間質浮腫、尿細管変性など)を短期~中期で比較する。
これらの実験では、静脈圧と動脈圧それぞれを単独、あるいは組み合わせて変化させ、同じレベルの“腎灌流圧変化”でも、静脈側負荷の方が障害パターンが異なるかどうかを検討しています。
得られた主な知見
複数の報告を総合すると、以下のような傾向が示されています。
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腎静脈圧を上昇させると
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糸球体内圧と毛細血管うっ血が急速に増大し、糸球体・間質の浮腫、尿細管の圧迫・虚血が起こりやすい。
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比較的短時間で尿量低下、GFR低下が明瞭になり、組織学的変化も早期から出現しやすい。
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腎動脈圧上昇(全身性高血圧あるいは腎動脈収縮)では
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初期には自己調節により腎血流・GFRは比較的保たれる範囲があるが、長期・高レベルの持続で糸球体硬化や細動脈病変が主体となる。
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同程度の短期観察では、静脈圧上昇モデルほど急激な尿量低下やうっ血性変化は出にくい。
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このため、「急性期に限れば」腎静脈圧上昇によるうっ血性腎障害の方が、同程度の動脈圧変化よりダメージが顕著という解釈がなされています。
現代的な理解とのつながり
これら犬実験の知見は、現在の「うっ血性腎障害(congestive nephropathy)」という概念と一致しており、心不全や下大静脈圧上昇時に腎機能が悪化しやすい理由の説明に利用されています。
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腎静脈圧上昇は、腎間質圧を上昇させ、糸球体濾過圧の有効成分を低下させるため、GFRを強く抑制する。
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一方で、慢性的な動脈性高血圧は主に長期の構造的変化(糸球体硬化、細動脈硬化)を通じて腎障害を進行させると理解されています。
従って、質問の「静脈圧と動脈圧のどちらがより腎臓にダメージを与えるか」という点については、「急性の犬実験では、腎静脈圧上昇(うっ血)の方が、同程度の動脈圧操作よりも急速かつ顕著な腎障害をきたすと報告されてきた」と整理できます。
長い引用でしたが、腎機能を守るためには、腎臓のうっ血を取り除くことに大きな意義がありそうです。実際に臨床の場では、SGLT2阻害薬で皮下の浮腫はよく取れます。高齢者などでは下腿の浮腫が時に難治性となることがあります。利尿剤の投与によってもうまくいかず、SGLT2阻害薬によって効率的に浮腫が軽減したりします。利尿剤は中心静脈圧を下げることによって、間質から循環血流中に水を引き戻しますが、SGLT2阻害薬は循環血液量に影響することなく間質の水分量を調整しているのではないかと感じています。もしかすると、同じ効果が各臓器で起こり、状態の悪い臓器、特に心臓や腎臓の間質性浮腫を軽減することで状態が向上している機序もあるように思います。
