「脳内遊戯」を科学の土俵に乗せるためには、「個体にとっての利益(生存)」と「系全体にとっての利益(安定)」を分離して評価できる実験系(証明)が必要です。そこで、現代の進化生物学の常識(個体淘汰)を覆し、「生態系維持のための睡眠説(栄養動態的睡眠仮説)」を証明するためのPC実験をしました。
1. シミュレーション実験
テーマ:不眠の「スーパー被食者」は世界を滅ぼすか?
最も現実的かつ、仮説の論理的整合性を証明するための「マルチエージェント・シミュレーション」をおこないました。
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セットアップ: 閉鎖された仮想空間に「植物(資源)」「被食者(草食動物)」「捕食者(肉食動物)」を配置します。
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変数の操作: 被食者の遺伝子に「睡眠深度(無防備になる確率)」を設定します。
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グループA:毎日必ず一定時間、完全に動けなくなる(寝る)。
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グループB(最強の個体):睡眠を全廃、あるいは半球睡眠で常に警戒し、捕食回避率100%に近い「スーパー被食者」。
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観測すべき結果: もし仮説が正しければ、グループB(寝ない最強種)の世界では以下の崩壊プロセスが起きるはずです。
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捕食者が獲物を捕れずに餓死・絶滅する。
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天敵がいなくなった被食者が爆発的に増殖する。
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植物(資源)を食い尽くす。
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被食者も全滅する(系の崩壊)。
対して、グループA(寝る弱者)の世界では、適度に捕食者が生き残り、個体数が調整され、「何万世代もシステムが継続する」ことが証明できれば、「睡眠という弱点は、システム永続のための必須機能である」という結論が導かれます。
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- このシミュレーションコード(Python)をAIに書かせて、Google Colabでグラフを書かせてみました。
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【グラフA:世界A(睡眠あり)】
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結果: 線が波打ちながらも続いていきます。
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推移:
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草食獣が増えると、肉食獣も増えます(睡眠中に捕まるから)。
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肉食獣が増えると、草食獣が減ります。
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草食獣が減ると、草が回復します。
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「動的な平衡状態(Dynamic Equilibrium)」が維持され、3者とも絶滅しません。
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【グラフB:世界B(睡眠なし・最強)】
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結果: 破滅的なクラッシュが起きます。
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推移(仮説通り):
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肉食獣の絶滅: 草食獣が強すぎて(寝なくて)捕まえられず、グラフの初期段階で肉食獣(赤線)が0になります。
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草食獣の爆発: 天敵がいなくなった草食獣(青線)が、指数関数的に激増します。
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資源の枯渇: 増えすぎた草食獣が一気に草(緑線)を食べ尽くし、草が0になります。
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全滅: 食べるものがなくなった草食獣が餓死し、青線が垂直落下して0になります。
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不毛の大地: 誰もいない世界が残ります。
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結論
この単純な数理モデル(実験系)において、「個体としての弱さ(睡眠による被食)」が「システム全体の寿命」を決定づけていることは、単純な数学では証明可能なようです。また、睡眠の深さすなわち捕食されやすさを少しずつ変化させながらシミュレーションしグラフを書かせると、個体レベルの「進化(自然淘汰)」は、常にグラフの「眠らない方」へ行こうとする圧力として働きます。 (※隣のライバルより少しでも寝ない方が、その個体は生き残るからです)しかし、種全体が「眠らない方」に行き過ぎた瞬間、その生態系は崩壊します。 つまり、現存している地球上の生物は、「(不眠)へ行こうとする進化のアクセル」と、「行き過ぎたら全滅するというシステムのブレーキ」が拮抗した、ギリギリの崖っぷちでバランスを取っている可能性が高いのです。とまあ、コンピューターのシミュレーションではこんな結果となりました。
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- 今回はもう一つびっくり事があります。このシミュレーションはAIの助けを借りながら行ったのですが、なんかすごいです。
