
AIを利用して、生態学で用いられる数理モデル(ロトカ・ヴォルテラの方程式)を拡張し、Pythonを用いてGoogle Colabに栄養動態的睡眠仮説の実証シミュレーションをしてみました。下に示した変数を操作することで、睡眠があることで被食者、捕食者、植物すべてが共存できるモデルを作ることができました。
このグラフの意味は、被食者(シマウマ)がV=0.00つまり眠らなければ14世代しか存続できません。捕食者(ライオン)は狩りに失敗して死に絶えます。シマウマは草を食いつくし世界が滅びます。V=0.01~0.02という適度な睡眠では19世代までシマウマの世代は保てます。V>0.03(寝すぎ)では捕食過多でシマウマは食いつくされてしまいます。つまり、「個体として『最強(寝ない)』であることは、種や生態系としての『最適解』ではない。 システムを長く維持するためには、個体がわざと隙を見せ(寝て)、エネルギーを上位(捕食者)に献上する『負けるが勝ち』のメカニズムが不可欠である。」変数は揺らぐことで、微妙なバランスを保ち生態系が維持されている。ということです。
1. 変数の定義(Variables)
このグラフを作るために操作・観測した変数は以下の2つです。
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独立変数(X軸):被食脆弱性(Sleep Depth / Vulnerability)
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定義:被食者(シマウマ)が、捕食者(ライオン)と遭遇した際に捕食される確率。
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意味:これを「睡眠の深さ(=捕食者に対する隙の大きさ)」とみなす。
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範囲:0.00(不眠・無敵)〜 0.15(熟睡・無防備)まで変化させて検証。
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従属変数(Y軸):生態系の存続期間(Ecosystem Lifespan)
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定義:植物・被食者・捕食者の3種すべてが絶滅せずに共存できた世代数(ステップ数)。
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意味:「システム全体の持続可能性(サステナビリティ)」を表す。
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2. 実験条件の設定(Conditions)
「被食者が放置されると環境を破壊する」という設定を行いました。
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条件①:貪欲な被食者(Greedy Prey)
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被食者は「大食漢」であり、かつ繁殖力が高い設定とした。
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意図:天敵による抑制がないと、指数関数的に増殖し、直ちに資源(草)を食い尽くす「環境破壊の要因」として定義。
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条件②:脆弱な捕食者(Fragile Predator)
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捕食者は代謝が高く、頻繁に狩りを成功させないと餓死する設定とした。
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意図:被食者が「隙(睡眠)」を見せてくれない限り、生存できない存在とする。
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条件③:回復の遅い資源(Slow Resource Recovery)
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植物の再生速度を低く設定。
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意図:一度破壊されると、回復不能なダメージ(砂漠化)を受ける環境とする。
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3. グラフの解釈(Results & Interpretation)
シミュレーションの結果、生態系の寿命は「睡眠深度」に対して非線形な反応(山型)を示しました。
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フェーズ1:不眠による崩壊(左側の崖)
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状況: 睡眠深度 ~0(被食者が強すぎる)。
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機序: 捕食者が狩りに失敗して餓死・絶滅。その後、制御を失った被食者が爆発的に増殖し、資源を食い尽くして自滅(飢餓絶滅)。
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結論: 「個体の生存能力が高すぎると、トップダウン・コントロール(捕食圧)が機能せず、『共有地の悲劇』を招く」。
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フェーズ2:適度な睡眠による永続(中央の山頂)
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状況: 睡眠深度 0.01 ~0.02(適度な隙)。
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機序: 被食者が適度に捕食されることで、捕食者が生存可能となる。捕食圧によって被食者の過剰増殖が抑制され、資源(草)の枯渇が防がれる。
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結論: 「睡眠という『意図的な脆弱性』が、生態系内のエネルギー循環を正常化し、システムの寿命を最大化させた」。
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フェーズ3:過眠による崩壊(右側の坂)
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状況: 睡眠深度 > 0.04(隙がありすぎる)。
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機序: 捕食成功率が高すぎ、被食者が繁殖する前に狩り尽くされて絶滅。食料を失った捕食者も共倒れとなる。
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一言でまとめるなら
「このシミュレーションは、個体が『最強(不眠)』を目指す進化圧が、必ずしも種の存続や生態系の安定を保証しないことを示した。
むしろ、睡眠によって自らを食物連鎖の中に『組み込まれた資源』として提供することが、資源枯渇(自滅)を防ぐ安全装置として機能していることが数学的に示唆された。」
