欧米人は出血が止まりやすいので、外科手術に関しても深部まで術野を速やかに広げてゆける一方、日本人の場合は手術の際に出血に気を付けなければいけないらしいです。私も腹部外科や救急医療に携わっていたこともありますが、外国人の手術はしたことがなかったのでそうなのかと思いました。
循環器内科の分野では、血管内カテーテル操作をするにあたって出血よりも梗塞を気にするそうです。欧米では特に血栓症に重きを置くので、細いカテーテルを使うとカテーテルに付く血栓を気にしなければならないそうです。日本では欧米人ほど血栓を起こしにくいので、細いカテーテルのほうが侵襲性が少ないので好まれます。すなわち、欧米では循環器疾患について血栓の可能性を考える一方、日本では抗凝固薬による副作用である出血を考えなければいけないということです。
血栓性の病気、心筋梗塞などが起こった場合に責任血管にステントを置いて血流を維持したときに、基礎疾患やステントの材質その他病変部位の数や質で、抗凝固療法や抗血小板療法をどのように行うべきか。抗血小板療法が必要な病態で、さらに抗凝固療法が必要な病態を併発している場合にどのように薬物を選ぶべきか、あちらを立てればこちらが立たずというような悩ましい状態があります。これらについて様々な臨床研究が行われ、その結果をどのように解釈するかについて勉強しました。
同じように考えられる病態に関しても、動脈硬化に起因する疾患に関して日本と欧米では違いがあるそうです。保険の問題やマンパワーの問題や人種による予後の違いによる問題など、いろいろあるようです。外国の臨床試験のデータをそのまま日本に受け入れることができないとか、世界的なスタンダートを知るうえでとても良い勉強をしました。
抗凝固薬として、欧米ではアスピリンをよく使います。二日酔いにも使います。アスピリン大好き文化で、私が外国で働いていた時もそう思いました。ほとんど信仰のような気もします。その影響が、抗凝固薬として欧米で第一選択として勧められている理由もあるのではないかと思いました。翻って、日本でも、漢方薬を意味も分からず使うのと同じような気がしました。