心不全が悪くなれば腎臓も悪くなり、逆も真であることがわかってきました。心腎連関症候群といいますが、体液性因子と神経性因子によるものだろうと推察されています。尿蛋白や尿アルブミン尿、低eGFRが心不全を悪くする予測因子として考えられています。これらの腎機能低下に対してRA系抑制薬をまず使うのですが、初期の腎不全には良いもののeGFRが35を切ると腎機能をさらに悪化させてしまうようです。ということは、腎機能の低下が軽いうちからRA系抑制薬を使って行くのがよいのかもしれません。この薬は、腎機能が軽ければ心腎連関症候群の入院や死亡などの重要な予後を改善しますが、高度腎不全にはその効果は一定ではなくしたがって個々の症例に対応する必要があります。
MRコルチコイド受容体拮抗薬ですが、血圧を下げるのでアルブミン尿が減るということではないようです。またこの薬は容量依存性にeGFRを低下させます。これが腎保護的に働くのかはわかりません。また血清カリウム値が上がる傾向があり、カリウム値が高すぎるまたは低すぎても全死亡率に影響を及ぼします。この薬も高度腎機能低下を伴う心腎連関症候群には必ずしもよろしくないようです。心不全にはfirst choiseで使う薬なので、心腎連関症候群にも使い方を正しくすれば有用です。
ベータ遮断薬については、心腎症候群について、末期腎不全でもよい効果が得られるようです。血清カリウム値や薬物代謝経路については考慮する必要があります。
カルシウムとリンと心腎関連症候群ですが、血中リン値が高いと生命予後が悪いことはわかっています。面白いのは、末期腎不全にカルシウム含有のリン吸着薬を使用するとかえって死亡リスクが上がるそうです。一方でカルシウムの含まれていないリン吸着薬はリスクを下げます。
血圧に関しては、年齢にかかわらず下げると心不全にはよいデータが出ます。ところが腎不全に関しては血圧の下げすぎはよくないデータがあります。心腎連関症候群には悩ましい結果をなりました。食塩に関しては、厳格な管理がよいのか、少し緩和した管理がよいのかについてはいまだ完全に答えは出ていません。心臓と腎臓は関係するものの、どちらの臓器に重点を置くかで最適な治療が変わるのかもしれません。
SGLT1/2阻害薬については、心不全の予後を、従来の治療と比べてよくするとの結果が出ています。SGLT1は主に消化管にあり糖の吸収に関係します。この薬は下痢が副作用です。SGLT2阻害薬の心不全にたいする作用はよい結果が出ています。SGLT1阻害薬とのdual効果が今後期待されています。
blog心不全と腎不全 心腎連関
2021.06.15