あめのもり内科

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2021.12.13

慢性腎臓病はCKDと呼称されます。究極の病態は透析になりますが、そこの至るまでに様々な障害が発生します。最近では特に心臓が悪くなることが注目されていますが、貧血が発症進行することも大きな問題です。CKDに伴う貧血を腎性貧血といい、かつては輸血するしか方法がありませんでした。輸血は一種の臓器移植でもあるので繰り返し行うと様々な問題が起こります。輸血によって免疫系等の乱れが起こったり、過剰な鉄が体内に入ってしまいますが、鉄の毒性は命にかかわります。1990年代からはエリスロポエチンの注射が出現し、CKDに伴う貧血は改善できる病態となりました。エリスロポエチンとは、主に腎臓から分泌されるホルモンで骨髄に働いて造血を促します。これで腎性貧血は一件落着と思われましたが、患者によってはエリスロポエチンに反応がなかったりしますし、そもそも治療に必要な量のエリスロポエチンは大量で生理的な量ではありません。当然その毒性もあります。
さて、この数年の間でエリスロポエチン注射に代わる飲み薬が出てきました。まだ出てきたばかりなので長期的な副作用はわかりませんが、少なくとも腎性貧血の治療薬としてはかなり有望な薬です。その仕組みは、高所トレーニング効果を薬理学的に作り出すことです。
人は高所に行くと酸素濃度が薄いことに順応してゆきます。赤血球を増やし、造血に必要な鉄の代謝を良くし、血の巡りをよくするような血管を増やします。そのほか実に様々な反応が起こりますが、この反応が起こる生理学的な作用機序を分子レベルで解明できたので、それを利用して体を高所にいるかのような状態にするということです。ちなみに、この働きを担うタンパクを発見した学者はノーベル賞を受賞しました。
今までのエリスロポエチン製剤はCKDによる貧血に効く物質でした。今回の薬は「CKD」と「CKDに起因する炎症」両方によっておこる貧血に効く薬です。外国ではCKDに伴う貧血を、「腎性貧血」と言うくくりではなく「全身慢性炎症に伴う貧血で、炎症の原因にCKDが関係する貧血」という考え方のようです。腎性貧血はエリスロポエチン不足だけで一元的に説明できず、一元的に説明できない原因に全身の慢性炎症が存在するからです。新しい薬は用量調節がしやすくかつ飲み薬であり、すなわちこれからCKD貧血の治療が進むことを意味します。貧血で苦しむ人を減らすことができます。

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