あめのもり内科

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2019.10.17

 行ってきました。学術講演会もいいのですが、このような小さな講演会で経験を分かち合う、教えてもらうというのもなかなかいいものが、あります。学術的なものと実地的なものと、両方の知識をバランスよく取り込めればいいなと思います。
 一題目は、癌治療の支持療法を行っている症例への血糖管理の話でした。がん治療では様々な副作用が出るために、ステロイドを時々に応じて投与するということが行われます。この時にはかなりの高用量のステロイドを使うことがあり、血糖が高くなるという副作用も認められます。この高血糖に対してSGLT2阻害薬を使えばどうなるかという発表でした。余った血糖を尿に流してしまうわけで、効果的に血糖上昇が抑えらえるとのことでした。インスリンを使う場合が多いのですが、これには低血糖のリスクがあります。ステロイドの副作用による高血糖は、そもそも血糖をうまく利用できないために起こるわけで、そのためにはインスリンを使ってどこかに血糖を押し込むよりも、余った血糖を流してしまうほうがリーズナブルかもしれません。
 二題目は救急症例における落とし穴という内容でした。三つの症例の提示でした。
 一症例目は80歳の心筋梗塞の例でした。夜中に胸が痛くなり、救急では痛み止めで鎮痛がある程度得られ、バイタルや検査結果に異状はなかったものの、結局は左主幹動脈の完全閉塞という例でした。心電図でもエコーでも、初診時にはわからなかったそうです。夜中に来院した時には、よほどのことがない限りカテーテル検査は行いません。
 二症例目は二日間の間で三回来院した腹痛の症例でした。三回目の来院時には腹膜刺激症状が出た上にアシドーシスになっていたたそうです。SMAの閉塞が見つかったためステントにて血行再建し、試験開腹も行いました。一度目の回復では腸管虚血の範囲がはっきりしないために、閉腹しないままに経過を観察し、最終的には三回目の開腹にて虚血がはっきりしたとのことでした。この時には残存腸管が30㎝しか確保できないことが判明したため、打つ手がなく死亡したとのことでした。
 三症例目は宿便イレウスによる大腸壊死の症例でした。検査では凝固系のデータがどんどん悪くなり、開腹手術で大腸壊死していたために大腸を全摘したそうです。結局救命できなかったわけですが、生前にDOACを過量に使っていた可能性があるとのことでした。その頃はすべてのDOACに拮抗薬がなく、大量の輸血とFFPを補ったもののうまくいかなかったそうです。DOACの効果は判定できないために、場合によってはこんなこともあり得るのかなという症例でした。もちろんDOACが根本原因ではありませんし、どれほど悪さをしたのかもわかりませんが。
 私も長く救命センターに勤務していましたが、いまさらながら怖い症例を何回も経験したことを思い出しました。勉強会の内容も忘れないようにしようと思います。

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