現在、日本医学会総会が開かれており、講演会や展覧会はオンラインで見れるようになっています。スクリーンに映せば臨場感抜群です。コロナのおかげもあってオンライン化が進みました。
二日間かけて新しいリハビリについて勉強しました。
リハビリといえば、減弱したり失った機能を訓練で取り戻すことと考えられています。つまり鍛えることが重要だということです。新しいリハビリは全く違う視点から機能回復にアプローチしておりとても勉強になりました。このようなリハビリが出現したことで、疾患に対する神経学的な考え方がガラッと変わる、またはガラッと進行する可能性があります。減弱した機能を取り戻すために訓練するのではなく、脳の中の間違った記憶の書き換えをする訓練です。わかりやすい例では幻肢痛の治療などです。存在しない体の部位の痛みは、脳の神経が間違って信号伝達回路を形成してしまっており、その間違った回路、すなわち間違った記憶を書き換える治療です。具体的な方法はVRゲームに似た方法をとるのですが、必ず座位で行うとか、必ず両上肢をつかって左右均等に行うとか、両手に持ったコントローラーを用いて3Dで行うなとということです。文章にすればなんだかわかりませんが、動画ではこれが分かるようにプレゼンテーションされていました。
脳は様々な情報を処理していますが、時に間違った処理方法をとることがあります。実際の臨床の場でよく遭遇するのは慢性疼痛です。本来は痛くないはずなのに痛みを訴える方は多いです。脳の情報処理の仕方が間違っていて、悪い方向に脳 の神経回路が鍛えられていると、痛くないことでも痛みを感じてしまっているのだと思います。このリハビリ法を使えば、その間違った記憶の書き換えができることで痛みが取れるということでした。
そのほか、脊髄損傷で体が不自由になった患者など、神経外傷や神経疾患などで身体障碍をきたした症例にもかなり効くとのことでした。今までは、神経が損傷を受けるとその神経が支配していた体の部位が障害を受けるという、中枢から抹消への神経の流れだけを考えていましたが、このリハビリの効果で分かったことは、中枢が混乱しているために末梢に障害が表れていることが多いということです。それゆえ、間違った中枢の混乱、記憶違いをいったん解除してやるということです。
様々な疾患について身体の機能障害がこのリハビリをすると劇的によくなります。リハビリといっても、できないことを訓練してできるようにするような従来のリハビリ形態は一切取りません。様々な脳神経疾患を持った人は関節連関といって、一つの関節を動かすと別の関節も動いてしまうということがあります。一つのことを正確に遂行しようとすればかなり集中して、関節連関が起こらないようにしなければなりません。これができないと、子供ではADHDとか自閉症の状態に診断されます。逆に言えばこのような発達障害にも、関節連関が取れれば落ち着きが出て治ってくるということです。新しいリハビリはそんなことができるようです。
座位で手だけを使った3Dのゲーム様VRで訓練をすると、神経外科的な病気はもちろん、記憶障害や、発達障害の問題行動にも良い影響が出るとのことでした。脊損による完全まひなども実は少しは生きている神経があるので、その神経に対して間違った記憶回路を塗り替えることで状態がよくなることが多いとのことです。
面白い考え方だと思いました。
blog日本医学会総会 VRを用いた新しいリハビリ
2023.04.19