加齢によって心臓の弁は固くなってきます。大動脈弁が固くなると、弁が開かないためにそれだけでも心臓は余分な収縮をしなければ全身に血液を送れなくなります。さらに弁の閉鎖不全が合併すれば、せっかく送った血液が一部逆流するので、その分も余計に心臓は仕事をして血液を送り出さなければなりません。弁を取り換えればよいのですが、人工心肺装置を使った開教手術に耐えられる体力がなければなりません。術中に心臓を止めて行う手術で、胸骨を縦に切って胸を開け心臓を開いて行うことになるので体に対する侵襲が大きくなります。
10年ほど前から、大腿動脈から管を入れて遠隔で弁を取り換える(正確には人工弁を心臓・大動脈内に装着する)手術ができるようになりました。もちろん、術前に入念な検査をして、どのような人工弁が体に合うのか、血管の状態はどうであるかなどを調べ、どのタイプのカテーテルを用いるべきなのかなどを考えることになります。今回はその主義についてビデオを用いた勉強をしました。
未来の宇宙船のような様々なモニターやレントゲン装置が並んだきわめてハイテクな部屋で行います。胃カメラのような超音波装置で食道から心臓を監視しながら、さらに腕からの動脈を介して心臓の中に入れた計測器からの信号を測定しながら、何かあった時のためにすぐに処置できるように動脈に別の装置を入れたまま、心臓外科と内科、アシスタントの医師やスタッフが何人もかかわりながらの手技になります。言葉の説明ではわかりませんが、とにかく一般の人が見たらびっくりするような未来的状況です。