あめのもり内科

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2024.02.04

生活を取り巻く衛生環境が良くなることで寿命が延びました。ここでいう寿命とは生物としての限界寿命のことですが、この生物学的寿命と健康寿命とのギャップを埋めることに医療のもつ役割があります。今日の生活を明日も同じように続けていきたいという気持ちを満足させることに医療の役割があるということです。

さて、人間としての生物学的寿命が延びてゆくと、老化に従って各臓器の機能は落ちてきます。もちろん老化以外のいわゆる病気によっても各臓器の機能は落ちてゆきます。心臓の血液ポンプとしての機能が落ちてしまった状態を心不全と言いますが、逆に言えば今日の生活を明日できなくなるほどに落ちてしまった心臓の機能を心不全というわけです。心不全とは病気の名前ではなく、心臓ポンプの機能が落ちているという状態をあらわす名前です。ここで一つ、心不全の概念は運動ができなくなるという視点に立てば、心不全は心臓だけの問題ではなく骨格筋の問題を含んでいるといえます。具体的には、骨格筋がどれだけ有効に酸素を消費する能力があるかということです。運動をすると、心機能に変化はなくとも心不全状態が改善するからこういうことが言えるのです。運動が心不全の治療としてもとても重要ということです。

現在、心不全へ医療的にアプローチする方法としてfantastic fourと呼ばれる四つの薬を使うという方法があります。心不全状態にあればなるたけ早期にこれらの薬剤を使うのが原則です。血圧が低すぎるとか、脈が遅すぎるとか、血中カリウム値が高すぎるとか、そのほかの病態によっては四つのすべての薬剤を使えないと思われることもあります。それでもなるたけ量を調節しながらでも、四つすべての薬を使うのが良いのです。そうしなければ、医療側はできることをやっていない、という罪を犯すことになります。

今回は心不全への薬物の中で特にSGLT2阻害薬について詳しく勉強をしました。この薬が心不全に効果がある理由は完全には解明されていません。ただ、心不全状態への治療としてSGLT2阻害薬を使えば数日以内に状態が改善するという事実があります。この機能の解明へのマクロなアプローチとして、SGLT2発現遺伝子を持っていない人口集団は心不全発症率が低いというデータが出てきました。SGLT2阻害薬を使っていれば、健康なマウスの骨格筋の代謝改善遺伝子がよく発現されるという事実も示されました。生まれたときからSGLT2阻害薬を使えばよいのではないかという飛躍した考え方も出てくるかもしれません。生物として遺伝的に持っている機能を抑制することで健康の改善が図れるということになってしまいます。不思議な話です。

医療経済的に心不全の入院治療には一回80万円がかかります。しかも心不全を起こすとその後も何回も心不全が起こることが約束されることにもなります。心不全を防ぐことは社会的にも大事なことなのです。SGLT2阻害薬を使えない病態もほとんどなく、よく効くので心不全にはSGLT2阻害薬をどんどん使えばよいのです。

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