腎臓は二つあり、何らかの原因で失われてしまっても透析をすることによって生命を維持することは可能です。にもかかわらず、集中治療室に入るような病態を持った人の場合、急性腎機能障害(AKI)を起こした場合は最終的に死亡に至ることが少なくありません。かつては、AKIは回復するといわれていました。実際にはAKIをきたした場合、最終的に死亡率は30から50%となり、長期的には何らかの腎代替療法を必要とするようになることが分かってきました。また、AKIをきたした症例は25%が一年以内にAKIを起こすという論文もあります。当然ながら元の腎機能が低い症例、高齢症例などではAKI発症後の生命予後はより悪いものとなります。癌患者は高齢者が多いため、AKIを起こすかどうかで癌患者の生命予後が大きく変わります。抗がん剤は腎障害を発症する可能性が高く癌治療には腎臓機能を考慮する必要があります。がん薬物療法時の腎障害診療も発行されました。
では、なぜAKIがCKIに移行してしまうのでしょうか。近位尿細管の短縮がAKI後の皮質萎縮の一因かも知れず、近位尿細管をターゲットにした治療が必要なのだと思われます。超急性期の尿細管エネルギー動態が腎機能予後を決定するという証拠が挙がり、もとからのネフロン数の多寡も大きく予後に関係します。腎に炎症が及べば腎実質に三次リンパ組織が発現し、マウスの実験より加齢でこの三次リンパ説が形成誘導されやすいこともわかってきました。腎移植後の腎機能低下症や血管炎による腎機能低下症の治療にもつながる可能性が考えられます。