心筋症には国際的に共通する分類はありませんが、日本では1,拡張型心筋症 2.肥大型心筋症 3.不整脈原性右室心筋症 4.拘束型心筋症に分類されます。原因別には一次性と二次性に分けられます。心筋症診療ガイドラインに従えば、まず家族歴や遺伝子変異があるかどうかを鑑別し、次に二次性心筋症として鑑別すべき疾患を特定します。その後に特発性(原発性)心筋症として先に書いた四つに分類した病名がつきます。
それではなぜ二次性心筋症を診断しなければいけないのでしょうか。それは原疾患によって予後が違うからであり、遺伝性の場合は家族の早期診断と早期治療につながるからです。さらに疾患特異的あるいは修飾的治療が進歩してきたからです。
二次性心筋症は、原疾患にアミロイドーシスやファブリー病、ミトコンドリア病その他の全身疾患を基礎に持つことが多く、原疾患による心臓以外の症状もあります。今では心臓MRIにより心筋性状が分かるようになりました。確定診断には遺伝子の変異を特定することもできます。
二次性心筋症をきたす代表的な疾患として心アミロイドーシスがあります。異常蛋白であるアミロイド産生の原因となる前駆物質は40種類ほどあることが知られており、産生されたアミロイド異常蛋白が何らかの理由(遺伝子異常か加齢)で臓器にたまります。ATTR心アミロイドーシスは、M蛋白が否定でき骨シンチが陽性であればATTRの確診がつくので心筋生検は必要がありません。臨床的にはHFpEFの10%以上は本症であり、高齢者の剖検では21%が、大動脈弁狭窄、ペースメーカー患者の2%はATTR心アミロイドーシスとのことで、決してまれな病気ではありません。またこの病気のtarget organは腱と心臓なので両側性手根管症候群は鑑別するにあたって気を付ける病態です。高感度トロポニン(感度が高い)、心エコー上での左室壁肥厚、心電図でwideQRS(特異度が高い)の三つがそろえばこの病気の確診度が非常に高くなります。
アミロイドーシスの治療は最近急激に進歩し、核酸医薬を用いたトランスサイレチン産生抑制、TTR四量体安定化薬などが使えるようになりました。治験レベルでは抗体治療も用いられています。
そのほか、二次性心筋症をきたす病態にファブリー病がありますが、この病気は実際よりも罹患率が高いようで、肥大型心筋症の患者の4~14%はαgalactosidase活性が低下していました。一方でそのような患者では古典的なファブリー病の特徴は有していませんでした。日本では新生児におけるファブリー病の有病率は7057人に1人とされています。診断は、男性であれば白血球GLA活性を測定すれば確定診断がつきますし、女性では家族歴を特定し、特定できなければ全エクソンを調べることによって確定診断ができます。治療はGLA酵素補充療法やシャペロン療法が適用されています。