MR(ミネラルコルチコイド受容体)は臓器障害に関与しているのか。普通のマウスに1%の食塩水とアルドステロンを投与すると、ミクロでは腎臓に組織障害が起こります。アルドステロン投与で血圧が上がりますが、この血圧上昇を通常薬で抑えてもやはり腎臓の組織障害は起こります。これにMRをブロックする薬を併用すれば腎障害は起こりませんでした。塩分があるとMRが細胞核内に移動し活性化されます。腎臓のホドサイトのMRが活性化されると蛋白尿が起こります。そのほか腎臓・心臓にはMRの活性化がいろいろと悪さをすることが分かってきました。酸化ストレスもMRの活性化を促進して悪さを起こすようです。今ではマウスの遺伝子を操作できるようになり、心筋細胞にMRがないマウスを作ると、心筋の線維化や不整脈が起こらなくなりました。
原発性アルドステロン症の患者では、体中に塩分が蓄積されており、手術により副腎手術を行いアルドステロンを減量すれば、体内や皮膚に蓄積されていた塩分が抜けていました。どうも皮膚にたまった塩は炎症に関与しているようです。局所に塩の濃度が上がれば炎症細胞を活性化して炎症が惹起されます。蜂窩織炎などでは殺菌にかかわる役目を担っているということになります。塩の集積が長期持続すれば、逆に炎症が起こり悪影響が生じます。おそらく塩がMRを介して炎症を起こすのでしょう。MR拮抗薬を使えば炎症が収まり臓器障害が起こらなくなります。血糖が上がればMRの分解されにくくなる上にMRの機能亢進がおこり塩分の悪影響がより強く出るようです。
SGLT2阻害薬とMR拮抗薬を投与すると一時的に糸球体ろ過率が下がりeGFRが下がったように見えます。もともと200万個ある糸球体の輸入細動脈は一分間に数回締まります。これがglomerulotubular reactionです。この自然の働きを、この二種類の薬は増強するのです。一方でRAS系阻害薬は、糸球体の輸出細動脈を有無を言わさず広げて糸球体内圧が下がり、eGFRのinitial dipが起こるのです。前者の薬剤で起こる結果は同じでも機序は全く違います。