あめのもり内科

06-6872-0221

特徴

ブログ

blog

2021.05.22

血中カリウム濃度は極めて狭い範囲に調節されています。カリウムは体になくてはならない元素で細胞内にたくさん含まれていますが、血中濃度が高すぎると心臓をはじめとする様々な臓器に悪影響を及ぼします。この微妙なバランスを調節する臓器が腎臓です。腎臓が悪ければ、食物から入るカリウムをうまく排泄することができないので高カリウム血症になってしまいます。そのため腎臓透析ではカリウムを血中から抜くような処置を行っているわけです。ところが透析をしない間には血中カリウム濃度が上がり、透析前後でカリウム濃度が上下します。そこで経口カリウム吸着剤を服用し結腸の末端からカリウムを吸着させるのですが、新しい薬は腸管全体から少しずつカリウムを抜いてゆくので、安定してしかも早く血中カリウムを下げることができます。透析患者でもこの薬をうまく使うことで、透析日にかかわらず安定して血中カリウム濃度が保たれます。かつての同系の薬と違って、便秘にならないこともメリットです。
もう一つ興味深い分野での高カリウム血症低下薬の勉強をしました。天災や事故が起こって手足を何かに挟まれた結果、挟まれた部位以下の血流不足から抹消の細胞が壊れてしまいます。壊れた細胞が多ければ、細胞内から漏れ出たカリウムが組織内に漏れ出てしまいます。さて、圧迫物を取り除いたときに、末梢組織に漏れ出ていたカリウムが一気に血流中に還流され、結果高カリウム血症になりあっという間に死亡に至ることがあります。被災地での事故の犠牲者にはすぐに大量の点滴を行い、カリウムを排泄させるために尿量を増やし、様々な薬剤を投与して高カリウム血症を防ぐ処置をします。間に合わなければ、透析を行ってカリウムを抜く必要があります。透析までの時間を稼ぐためにも、新しい経口カリウム吸着剤をつかうとよいという勉強をしました。経口あるいは経直腸で使うのです。なるほど、私も救命センターにいたころはクラッシュシンドロームの治療を行っていましたが、大規模災害では透析がすぐにできるわけではなく、その意味でも新しいカリウム吸着剤が必要になるのです。考えが及んでいなかった大規模災害分野での話でした。
循環器疾患分野で良いと思われる薬を使うと、血中カリウム濃度に悪影響を及ぼすことがあります。血中カリウムさえおかしくならなければ使えるはずの薬が使えないことがあるのです。このようなときに、新しい経口カリウム吸着剤を使いながら望ましい循環器病薬を使える、そんな選択肢ができてきました。なるほどと思いました。
この新しい薬は、腸管全長にわたってナトリウムやカルシウムと交換にカリウムの吸着をするとのことです。腸管内の部位によって酸性度の違いにも関係なく効果的にカリウムを吸着します。高カリウム血症に対して気軽に(=副作用なく)使える薬が誕生したことで、腎不全のみならず、腎不全に合併しやすい心不全にも使えるようです。

close

新型コロナウイルス対策

06-6872-0221