あめのもり内科

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2021.08.10

心臓の収縮力が不足するタイプの心不全は、心臓の細胞内に収縮力を落とす仕組みが働いています。
心臓細胞の中の信号伝達物質であるサイクリックGMPが減っており、これを賦活化させることが心不全の治療になります。心不全に標準的に使われるベータブロッカーは心筋細胞内の交感神経系信号を落とすことで、副交感神経系の信号すなわちcGMPを増やすことになるのです。またAMP,BMPが細胞外から働くことでcGMPを増やす方法もあります。これがARNIといわれる心不全治療薬です。確かにこの薬は心不全の不顕性期に使えばとても良い結果をもたらします。NTproBNPが三桁の収縮不全心に使えば、労作時の息切れなどがかなり良くなり、認知症患者の認知レベルが劇的に改善した例も経験しました。心房細動合併例などはNTproBNPが1000を超えることも珍しくありませんが、こんな症例にもとてもよく効きます。今回勉強したベルイシグアトは血管内皮が賛成する一酸化窒素に働きかけることで、直接的に細胞内cGMPを増やします。やはりNTproBNPが低い段階で使うべき薬だそうです。
心不全の治療目標は、以前は生命予後の改善でした。今は生活レベルの改善にも光が当てられるようになりました。心不全による入院を避けることも大事です。長く生きても、息も絶え絶えであれば人生は詰まりません。たとえ寿命は延びなくても元気にいたいものです。新しい薬は生活の質を上げて、医学的にも心臓だけではなく心腎連関から腎臓にも効きます。
おそらく、新しい心不全治療薬は生命予後もよくすると思われますが、観察研究の質からその効果を確かめることができませんでした。人間を相手にする研究では倫理に反する実験的な観察を継続することはできないからです。それでも生活の質には大いに役に立つことがわかりました。
いまだ、心不全にどのようにこれらの薬を組み合わせたらよいかははっきりしませんが明るい材料です。

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