不整脈とは文字通り脈が乱れることですが、脈の信号を作り出すペースメーカーの場所が本来あるべきところと違うところにも現れてしまうとか、脈が伝わる電線に当たる経路がもつれて信号が何回も伝わるとか、イメージ的にはそんな感じで不整脈が発生することがあります。
アブレーション:ならば、異常なペースメーカからの信号が、いかに伝わらないように物理的に囲ってしまうとか、もつれた電線を切ってしまうとかすればよいわけです。実際には、心臓内部からカテーテルを使って浅いやけどの線を作って囲ったり、冷やして凍傷の線を作って囲ったり、レーザーを用いて焼いたりします。アブレーションといいます。こうして物理的に異常信号を隔離すれば、薬剤治療よりもずっと治療成績がいいことが分かりました。しかしながら実際に細胞に変性をおこ支えるので、薄い心房の壁を破ったり、心臓の外側にある臓器、食道などに障害を与えたりする副作用が極めてまれながらあります。せっかく治療しても、長い間に再発することもあり得ます。来年からは細胞を物理的に変化させることなく、異常な細胞のみを狙って壊すアブレーション法が使われるようになります。電線を、カテーテルを使って心臓内から病変部位に押し当て、数百ボルトの電圧を数十から数百ナノセカンド、数十回与えます。そうするとターゲットとする心筋細胞のみを壊死させることができます。気管や神経、食道の細胞には影響を与えず、この電圧に感受性のある心筋細胞のみを壊します。心臓内膜には影響がないため、術後の心臓に血栓を作ることもありません。パルスフィールドアブレーションといいます。治癒率は60から70%ですが、治療に伴う合併症がほぼ起こりません。今後期待される不整脈治療法です。
リードレスペースメーカー:徐脈性の不整脈など、ペースメーカーからの信号がない、または信号が伝わる電線に当たる心筋細胞に変性があり信号が伝わらない、という不整脈があります。心室内に、人工的に脈信号を発するペースメーカを留置するという治療法があります。Ⅲ度の房室ブロックには本来DDDペースメーカーが良いことはわかりますが、心室内留置ペースメーカーではP波に関係なく脈信号を作ることになります。なんと今では加速度計を内蔵し、P波を感知しそのすぐ後に脈信号を作るペースメーカーができました。心室留置にもかかわらず、実質的にDDDタイプです。しかも10年ほど電池寿命があり、カテーテルを用いて取り換え可能なものも出てきました。
Dualchnber Leadless Pacemaker:徐脈性不整脈の治療で誰もが考える方法に、心房と心室にペースメーカを留置し、それぞれのペースメーカーが連絡を取りながら正しい脈拍を作り出せればとより自然だという方法があります。理想ですが、なんと実物の治療が近く手に入ると思われます。
血栓の予防:心房細動では、規則的な拍動が失われるため心房内で血液が滞留し血液凝固隗ができ、これが血流にのって流れてゆき脳血管につまることが問題となります。そのため抗凝固療法が必要となるわけですが、血液凝固隗が形成される場所がなければ心房細動でも抗血栓薬は不必要になります。心房内で血液凝固隗ができる場所はわかっている(左心耳と呼ばれる場所)ので、その場所をふさぐような処置をすれば、脳梗塞のリスクもなくなります。今ではカテーテルを用いて左心耳を閉塞する方法が開発されています。