慢性肝疾患は最終的には癌になることが多く、部位別癌死亡者数では肺癌、大腸がん、胃癌、膵癌に次いで多く第五位を占めています。罹患数は多くないものの死亡者数が多いのは、母地に肝硬変があり予後不良だからです。つまり、肝硬変が治らなければ、癌が治っても次から次へと肝がんが発生してくるからです。特にC型肝炎ウイルスに罹患している場合は発がんリスクは36倍と、タバコによる肺癌発がんリスク4倍と比べてもとても高いことが知られています。日本では肝炎対策基本法という法律があり、肝炎、特にウイルス性肝炎の撲滅が目指されています。
C型肝炎に対する治療は現在はDAA治療と言って直接ウイルスに効く薬ができました。C型肝炎に対しては非代償性肝硬変など進んだタイプの肝炎にもほぼ治る時代になりました。ウイルスがいなくなれば肝硬変も軽快し、死亡率もかなり減らせることができるうえに肝がんの発生率も低下します。C型肝炎ウイルスが除去され、糖尿病がなく肝臓の線維化の指標が低く、AFPが低い人はほとんど発がんしないことが明らかになっています。
B型肝炎は母子感染し、治療には核酸アナログ製薬が第一選択となります。これは肝炎ウイルスの分裂を妨げる治療です。残念ながらウイルスの除去はできず、機能的治癒と言ってS抗原を消すこととコア関連抗原を検出できなくすることが今の治療目標です。しかしながら、治療により肝機能はよくなるものの実は目標であるS抗原の除去はほとんどできないのが実情です。現在はいまだ実験的ではありますが、S抗原を除去するための様々な治療法が開発されつつあります。
脂肪肝も肝硬変になりえます。かつてはそれほど予後は悪くはないと思われてきましたが、脂肪肝炎からの肝硬変は、発がんの可能性についてウイルス肝炎と変わりません。生存率についてもウイルス性の肝硬変と同等で予後は不良です。アルコール関連と非アルコール関連、そしてその中間による原因があり、この分類も設けられています。ビールなら中瓶一本、日本酒なら一合を毎日飲んでいて脂肪肝があればアルコール性肝疾患です。また、アルコール性に限らず血液検査でASTが30以上あれば要注意です。血小板数が18万をきるとさらに要注意で、肝臓の硬さについてはいろいろな指標を組み合わせたFIB-4Indexが判定に使われています。今ではELFスコアやCK18Fという別の指標も保険収載されました。さらに肝臓の硬さをMRIや超音波検査を用いたelastography、心臓の心拍を利用して超音波で肝臓を観察するelastographyなども開発されています。肝臓に脂肪がどれほど含まれているかMRIを用いて判定する方法もあります。超音波減衰法などもあり、これらを用いて標準的な指標を開発して治療に結び付ける方法が模索されています。